LEVEL 5
肌悩み別ケアガイド
「私は敏感肌だから」——こう自認している方は少なくありません。しかし、皮膚科学の観点からは、敏感肌は生まれつきの「肌質」ではなく、バリア機能が破綻した「状態」です。つまり、適切なケアによって改善できる可能性があります。
敏感肌のメカニズムは、悪循環として理解できます。まず、何らかの原因(過度な洗浄、乾燥環境、ストレスなど)でバリア機能が低下すると、TEWL(経表皮水分蒸散量)が上昇します。バリアが弱まった肌では外部刺激物質が容易に侵入し、炎症カスケード(IL-1α、TNF-α、IL-6など炎症性サイトカインの連鎖反応)が起動します。この炎症はさらにバリア機能を破壊し、悪循環が成立します。
バリア修復の鍵を握るのがセラミドです。角質層の細胞間脂質の約50%を占めるセラミドですが、その種類と比率が重要です。健康な肌では、セラミドNS(非ヒドロキシ脂肪酸スフィンゴシン型)が約50%、セラミドNP(非ヒドロキシ脂肪酸フィトスフィンゴシン型)が約25%、セラミドAP(α-ヒドロキシ脂肪酸フィトスフィンゴシン型)が約25%の比率で存在します。この比率を模倣した製剤が、最も効率的にバリアを修復するとされています。
近年注目されているのが、皮膚マイクロバイオーム(常在菌叢)の役割です。健康な肌表面には、S. epidermidis(表皮ブドウ球菌)をはじめとする善玉菌が生息し、病原菌の増殖を抑え、免疫の恒常性を維持しています。バリア破綻した肌ではこの菌叢バランスが崩れ(ディスバイオシス)、S. aureus(黄色ブドウ球菌)などの有害菌が優勢になります。
発酵成分(乳酸菌発酵濾液、酵母発酵エキスなど)は、善玉菌の栄養源となるプレバイオティクスとして機能し、健全な菌叢の回復を促します。また、発酵過程で生成される有機酸やペプチドが、肌のpHを弱酸性に維持し、善玉菌に有利な環境を作ります。
敏感肌で感じる「ヒリヒリ」「チクチク」の正体は、表皮内に存在するTRPV1(Transient Receptor Potential Vanilloid 1)受容体の過剰活性化です。本来は43℃以上の温度を感知するセンサーですが、バリア機能が低下した肌では閾値が下がり、低濃度の刺激でも活性化されます。TRPV1の活性化は、サブスタンスPやCGRPなどの神経ペプチドの放出を引き起こし、血管拡張(赤み)と炎症を誘導します——これが「神経性炎症」です。
敏感肌のケアは、バリア修復(セラミド)、菌叢回復(発酵成分)、刺激回避の3本柱で取り組むことが科学的に合理的です。「敏感肌用」と書かれた製品を選ぶだけでなく、成分と配合の科学を理解して、自分の肌に必要なものを見極めましょう。
KAIANは、科学的根拠に基づいたスキンケア製品を開発しています。
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